平成20年7月24日
お客様各位
株 式 会 社 山 喜 農 園
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球根情勢報告
2008年オランダ産百合栽培面積表送付にあたり
平素よりお引き立ていただき誠にありがとうございます。
「2008年オランダ産百合栽培面積表」が発行されました。
例年通り、品目別・色別に当社独自で分類した資料が完成しましたので、お送り致します。
宜しくご参照下さい。
まだ十分な分析は行っていませんので、この栽培面積表の動きが、球根市場にどの様な影響が出るかはわかりませんが、品種・品目によっては、予想と違った動きとなっている物もありました。
いくつかの品種の動きは、注意すべきかなと、感じています。
品目ごとの動き
@A.H |
17.39%減少 |
114.31ha減少 |
|
L.A |
2.83%増加 |
27.09ha増加 |
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A.H/L.A合計 |
5.40%減少 |
87.22ha減少 |
推定43,600,000球減少 |
A鉄砲百合 |
40.40%減少 |
31.87ha減少 |
|
L.Oハイブリット |
45.30%増加 |
8.82ha増加 |
|
鉄砲百合/ L.O合計 |
23.30%減少 |
23.05ha減少 |
推定11,525,000球減少 |
※07年産L.Oの合計面積は19.48haが正しく、表中の24.52haは間違い。
※BKDが発行した面積表中では、ホワイトトライアンフがO.Hの分類となっているが、間違いでL.Oに分類されるべき。
L.Oの合計面積については、07年の速報値と07年の確定値の誤差があまりにも大きい。
したがって、本当の所は不明。
BO.H |
14.15%減少 |
240.56ha減少 |
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O.T
|
6.29%増加 |
14.50ha増加 |
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O.H/O.T合計 |
11.70%減少 |
226.06ha減少 |
推定86,000,000球減少 |
@A.H/L.Aの動き
・黄色:計49.8haの減少
元々A.H/L.Aの栽培面積の中の黄色シェアは20.4%と、日本の需要する色バランスからいけば、少なめだった。
更に、その面積を減らしているという事になる。
ギロンデ・セベコデジール・セラダ・セベニスなどは、注意が必要。(但し、セベコデジールとセラダは南半球産09年産があります。)
フレヤが劇的に増加しているが、日本のマーケットにとっては意味がない。
それだけ日本向け品種の減少率が高いという事。
・ピンク:計48.6haの減少
ベルメール・アルガーブ・サムールの減少が目に付く。
表中には無いが、カプレットの面積は06/07では大きく減少させたが、07/08は生産を維持している。
当社は、それほど取り扱っていなかった品種だが、ピランデロの栽培面積が目に付く。
この面積も日本にとっては意味が無い。
それだけ日本向け品種の減少率が高いという事。
・白色:計26.17haの増加
日本においては、それほど重要な花色ではない。
増加した理由は、南ヨーロッパ・南アメリカ向けの為。
両マーケット共、切花市場は不調な為、この増加は必要なかったのでは?
・赤色:計6.38haの減少
日本においては、それほど重要な花色ではない。
減少した理由は不明。
動きとしては、モンテネグロ・ファンギオの減少、ネロ・バティステロ・オリジナルラブの増加が目に付く。
表中には無いが、ランディーニ・ディメンションも増加している。
ネロネは良品質の球根が無い。
・オレンジ:計23.85haの増加
バリトン・ベイトリックス・ブルックリン(生産停止)・ブルネロ・オレンジピクシー(鉢物用)ヘラクリオンなど、重要品種の減少が目に付く。
表中にはないが、リガタも半減している。
一方、L.Aのオレンジは、ほぼ全ての品種が増加している。
インディアンダイヤモンド(夏用)・オレンジタイクーン(早生)の増加はなんとなく理解が出来るが、アドバンテージ・マドリットの増加は理解不能。
一体、世界中のどこの国が使うのか…謎です。(多分、相当量が圃場廃棄になる。)
オレンジL.Aで唯一面積を減らしたのは、日本で最も消費されているロイヤルトリニティ。
N.Z産の登場を踏まえればこの減少は適性か?
ちょっと減り過ぎの様な気もする。(透かしオレンジの減少と合わせて考えると。)
D.J社のオレンジ系新品種は、オレンジタイクーンより早生で小球多花性のものが多い。
・アプリコット/バイカラー:計2.59haの減少
特にコメントはありません。(出来ません。)
ヨーロッパ市場と日本市場では、アプリコットとオレンジの色の分類が違う。
※07年産オランダ産A.H/L.Aは、オランダ球根農家/輸出業者レベルで推定40〜50,000,000球、球根が余っている。(ちなみに、黄色・ピンク・オレンジの在庫が多かった様です。)
トータルでは、今回の減少数はまだ十分とはいえない様です。
但し、色別に分析すると状況は違うと思います。
A鉄砲百合/L.Oハイブリットの動き
鉄砲百合については、ほぼ全面的に減少。
99年以降、生産ピークの01年産181.67haからみれば74%も減少した事になる。
白系オリエンタル・白系A.H/L.A増加の影響か?
サクレクール・スノークインなど、北ヨーロッパ市場で消費されていた品種や、ホワイトエレガンス・ホワイトヘブンなど、南ヨーロッパを中心に世界中で消費されていた品種も激減。(ちなみに、フランスでの球根生産は増加しているそうです。)
A.H/L.Aのピンクと共に、北ヨーロッパの量販市場で大量に消費されていた品目がこの鉄砲百合だが、ヨーロッパ経済の不透明感が、はっきりとしてきた証拠だと思う。
ユーロ高すぎなのです。
鉄砲百合の激減の穴を埋める形になるのが、L.O/Lハイブリット(鉄砲百合とO.Hをかけて、更に鉄砲百合をかけた。)のホワイトトライアンフ。
球根農家、切花農家、花屋さんの為にも、この動きは正解だと思う。
※フランスにおける鉄砲百合の球根生産状況は、全くわからない。
この品目は、ヨーロッパの量販市場の動きに大きく影響される。
BO.H/O.Tの動き
・ピンク:24.82haの減少
ソルボンヌの減少は予想を超えていた。
ピンク全体の減少中、約72%がソルボンヌの減少が原因。
ルレーブ・ロンバルディア・メデューサも減ってくれました。(減り過ぎでない?)
ジャスティナは随分増えている。
ビタラも実はかなり増加している。
両品種とも、到花日数がシイラ並みに長く、栽培上の難易度が高い。(ジャスティナはスミ症。ビタラは咲き足早く、花首が折れやすい。)
ソルボンヌの代替としては、特に夏場の作型では無理。
冬場も到花日数が長いから、あまり営利的とはいえないのでは?
代替として適応出来る作型は、限定的となる。
・レディピンク:43.6haの減少
この減少は、全く見込んでいなかった。
但し、日本での消費が大幅に減少しているマルコポーロ、もしくは全く消費が無いに等しいエクスプレッションの減少が、レディピンク全体の減少のうち約75%を占めている。
ティアラの減少はN.Z産も減少しているので、ちょっと予想外。
ウィレクアルベルティも減りました。
ブルレスカ・グラシア・シーズンズ・エンジョイ・エナジーなどは、まだまだ先の話。
レイクミシガン・マーベル・ナマラ・オブセッションの増加も全然足りていない。
マレロ・シイラの減少は「なぜ?」。ちょっとビックリしています。
※マレロは南半球に生産を移動した。(誰も買う訳ないのに…。夏用品種ですよね。)
※シイラはV.Z社独占から一般農家への生産移行中の為。09年以降は増加予定。
使用作型は限定的だが、ペントハウス(10月20日以降〜6月20日頃まで採花。)が増加したのは良かったと思います。(この花色タイプの中では、到花日数が短い・丈が伸びにくい点注意。切前注意。)
6月20日以降〜10月末日位で、有効と思われるオールスターという品種を、試験導入してはいかがでしょうか。(オールスターはピンクです。ジャスティナは夏場に栽培する事が難しいので、その代わりです。到花日数は長いです。)
※マレロの球根価格は、7月22日以降受注分からしばらくは、18/20:345EURO・20/+:385EUROとなります。
それ以前に注文頂いた分についても、同一FOB価に下げて受注しておきます。(7月11日在庫表価は18/20:420EURO・20/+:430EUROとなっているが、それより安く買えました。)
マレロについては、8月以降、再び価格が上昇するかも知れません。
この価格で宜しければ、おさえて下さい。
※多分、クリンク社(一番品質の良い農家)のマレロは、この価格帯で売り切れると思います。(その他の農家の球根は…?)
・レッドピンク:25.84haの減少(但し、ロビーナ・ドナトをこのグループに入れると14.24haの減少。)
日本にとって、それほど重要な花色ではありません。
但し、この花色の減少の代替品種は、ソルボンヌしか無いはずです。
・赤色/白色:102.72haの減少
日本にとって、それほど重要な花色ではありません。
北ヨーロッパ市場、北米・南米市場にとって最も重要な花色です。
鉄砲百合/ピンクA.H/L.A同様、量販が大量に消費していた品種が、激減しています。(メロースター・スターゲーザー・スターファイター・クリスタルスターなど。)
量販が設定した切花仕入価格に、切花農家が合わせて球根を買おうとすれば、球根農家は完全に逆ザヤとなってしまいます。
世界の最先端をいく、高度園芸の極みの様な、オランダの球根農家すら耐え切れません。
日本の量販には、一般花屋さん並みに高い品質の切花を、高級品として取り扱う、「差別化販売」を行って頂ければ、本当にありがたいです。
日本の切花農家も「安い物」を量販に売るのではなくて、「良い物」を「良いタイミング」で納品して欲しいです。
イギリスやアメリカの量販の様な、馬鹿な失敗はやめましょう。(まさか中国などの不安定なマーケットより先に、球根農家がこのマーケット用品種を減らしてしまうとは…。驚きです。)
※この花色マーケットがソルボンヌを採用してくれれば、中国・台湾・韓国などに無理して、ダンピング販売しなくて良くなるのですが…。
その方が業界の為にはいいのですけど…。
ヨーロッパやアメリカ人にとっては、ソルボンヌよりスターゲーザーの方が綺麗なのでしょうかね?ちょっと信じられません。(結局、作業性・輸送性が優先されてしまうのでしょう。ヒルベティア(白)・キャンベラ(赤)が、このマーケットにいくのだと思います。日本ではまず、通用しない品種です。)
・黄色/白色:6.67haの増加
この花色は到花日数の長い品種が多い為、南半球産の生産が伸びてきません。
合わせて、冷凍保管性に優れた品種が多い為、オランダ産が増加したのではないかと思います。(こういう考え方は好きです。利にかなっている。)
日本において消費は少ないですが、ヨーロッパ高級花市場では、安定的に消費されている花色です。
・赤:2.88haの増加
目立って増加したのは、キャンベラとコルバラとモンテズマです。
キャンベラは赤というより赤/白に分類すべき品種です。(うちの課長は赤という…。)
ドルドーニュの減少が目に付きます。
世界的には、赤/白の代わりに増加が求められている花色の様です。
コルバラは晩成ですが、モンテズマは早生です。
この花色において、日本にとって最も重要な品種はビビアナかと思いますが、07/08では栽培面積は増えていません。
V.Z社にしては、珍しく球根価格を上げてきたのは、この生産面積の動きによるところと思われます。
・白:63.66haの減少
カサブランカが激減しました。
これで良いのだと思います。(球根代は上昇してしまいます…。)
良い品質の球根を作ってくれる農家を、支えていかなければと思います。
マザーチョイス・リアルトの生産増加は失敗でしょう。
クリスタルブランカも、もう5〜7ha減った方が良かったと思います。
ノバセンブラの球根価格は高すぎて、南ヨーロッパ市場は迷っています。
日本の農家も迷っています。
この際、価格が下がれば良いのに。
そうすれば、消費も増えるかなぁと思います。
サンテンダーが増加しています。
今年、津南と堀之内で、国産球からの、切花出荷が実行されます。
とりあえず6〜7月切り作型では、素晴らしい品物が出来ました。
白色オリエンタル国産球化には、大変お薦め出来る品種です。
夏作でも、シベリアより約4日間到花日数が短い様です。
シベリアを上回れる商品になってくれればと思います。
シベリアが減少しました。
価格動向は中国マーケット次第です。
・その他/花色不明
コメント無し。
・O.Tハイブリット:14.5haの増加
ベラドンナ増加:失敗だと思います。
イエローウィン減少:良いと思います。(不足気味ぐらいで調度良い。)
マニサ増加:失敗だと思います。
ドナト・ロビーナ増加:球根価格を下げざるをえないでしょう。
作り易いですからね!(ちなみに、ロビーナ18/20の新価格は255EUROになります。)
ニンフ増加:そういう訳で、球根価格を下げました。(昨年より。)
グルーワイン増加:増え方が足らない。球根が足らない。
ビサベルサ増加:早生ですからね。ルレーブ並みに。だけど花はどんなものなのでしょう?
※まだまだ有望種の面積増加が足りません。
08/09年産では、まだまだ当てになりません。
もうちょっと時間がかかります。
※O.H/O.Tの球根市場動向は、南半球産の生産流通状況の影響が大きく、品種・花色事の面積増減が、どの様に価格動向に影響するのかまだわかりません。
様々な意見がありますが、日本・台湾・イタリア・オランダ等の今期前半戦の切花市場の動きをみると、過剰なのはむしろオランダ産(北半球産)ではなくて、南半球産なのでは?という考え方も出て来た様です。(北半球/冬場の生産経費増加分を市場価格が吸収しきれていない。今年の前半は、世界中で異常に切花価格が低迷した。実は日本はまだ良い方。)
6月25日現在、日本は約23,500,000球の南半球産オリエンタル球根を確保している様です。
埼玉の大手生産グループの、北半球産から南半球産へのシフトはまだ続いている様子で、一般業者流通の確保数は、昨年対比約1,300,000球減少している様です。(国内輸入業者の未販売在庫は、昨年同期比ではやや少なめの1,350,000球程度となっている様です。)
今後の作況によるところの欠品等考えれば、前年比500,000〜1,000,000本程度の減少となる様です。(2.1%〜4.2%の減少。南半球産球根からの切花のみ。)
日本の輸入業者は、国内同業者在庫を消化して、追加発注は控えるべきだと考えます。(日本国内の絶対流通数は、そんなに増やさない方が良い。)
※現在33協力市場様より、08年上半期1月〜6月の百合切花市場流通状況調査を行っていますが(7月23日現在26市場より解答。)06/07産で、南半球産オリエンタルは3,000,000球も輸入球数が増加していたのに、07/12月〜08/5月のオリエンタル流通本数は、前年比やや減少傾向となっていた様です。(05/06年産でオランダ産が、大きく減少している為12月〜2月の間が減少している。)
06/07産オランダ産もかなりの 減少となるはずですから、冬場のオリエンタル系切花本数の更なる減少は、ほぼ間違いない状況です。(6〜8%???)
減少しすぎには注意しなければいけません。
今まで以上に計画的な生産と計画的な納品販売を行って、市場に迷惑がかからない様にしないといけないのだろう思います。(大穴をあければ輸入切花にスキを与える。但し、09年オランダ産の栽培面積が減少する時、最初に球根が買えなくなるのは、日本ではないはず。)
O.H/O.Tについては、栽培面積表から、今後の球根市場動向を分析するのは、大変難しいです。
他国の球根消費動向/南半球産の消費動向を見ながら注意深く、観察しようと思います。
いづれにしても、86,000,000球の減少数は、ある程度想像はしていましたが、ちょっとビックリしました。
※品目別・花色別分析を実行している輸出業者/輸入業者は、現時点ではまだ、ほとんどいません。(多分、今週から来週にかけて、皆が調査を始める。)
多少は、球根市場にも動きが出てくると願っています
注意していて下さい。
宜しくお願い致します。
以上
森山 隆