平成19年12月20日
お客様各位
株 式 会 社 山 喜 農 園
新 潟 県 魚 沼 市 原1280-1
TEL. 025-794-2455
FAX. 794-4168
E-mail:info@yamaki-noen.co.jp
HP Address.http://www.yamaki-noen.co.jp
球根情勢報告
平素よりお引き立ていただき誠にありがとうございます。
H19年も残すところ、後10日ほどとなってしまいました。
1年の過ぎるスピードが、年々早まってきている様に感じています。
今年も様々な事が起こり、忙しい1年でした。
当社業績は、大きな海上コンテナ輸送事故などがあった割にはまずまずの年となった様です。
農業経済情勢の厳しい中、ほぼ1年間を通して百合切花価格は安定していた様です。
「計画性」を最重要テーマに、お客様である切花農家=産地が、販売計画に合わせた生産計画が立てられる品種=球根供給体制を取ってきた結果を、少しずつ実行し始めた産地やグループが出てきてくれた事は、自分の事の様に、達成感がありました。
H20年は地元のJA北魚沼 堀之内花卉園芸組合が、組合結成60周年を迎える年であり(昭和23年=農協が出来たのと同じ年)、「100年産地」を目指して新たなスタートを切る年となるそうです。
花卉園芸組合は、長期にわたって採用してきた3つの販売方法を見直し、品目別販売組織体制、品目別組織活動を行う事を目的に、5つの販売団体に分かれます。
5つの専門化した組織の力を1つに結集し、新たなスタートを切る改革の年となります。
H19年の準備の段階では、この新事業に大きく、深く関わらせて頂き、「会社の経営」とは違う、「産地の経営」がどの様に進められていくべきか、大変勉強させて頂いた年でもありました。
一球根業者、一納品業者に、ここまでの改革事業に関わらせて頂けたのは、「地元ならでは」かと思いますが、本当に感謝しています。
実際は来年からのスタートですが、球根業者として一生懸命サポートしていきたいと思います。
又、この経験をいかして、今後の自身の仕事でも、より「切花農家=産地」との連携を深めていければと思います。
今年の5月から「魚沼・花・ほりのうち」というタイトルで、地元の花卉生産後継者のグループが、Home pageを立ち上げました。当社Home pageと、相互リンクをはらせて頂いています。
「記録する事、伝える事」を、一生懸命行っていたと思います。
普段の会話では、伝わってこない自分自身が聞き逃した皆の思いが、写真や文章から良く「伝わってきた」なぁと思います。
頑張って「記録」し続けてくれたらと思います。
横浜で八百屋を営んでいる私のおばさん(亡父の妹)は、「父と叔父」が、「堀之内の花」「百合の花」と、どの様に関わってきたかを知る事が出来て、又、知ってもらう事が出来て、涙を流して感激していました。
ありがとうございました。
H4年に有限会社から株式会社に改組してから先月まで、「農業生産法人」は、休止した状態でしたが、法律の改正に伴い、地域行政・農業委員会・等の許可を頂き、今月12月より再び「農業生産法人」「株式会社 山喜農園」、としてスタート致します。
来年も宜しくお願い致します。
オランダ産フリージア
07年納品分
まだまだ頑張っています。
オランダ産アイリス
06年産
高温抑制アイリス
12月22日現地確認予定。
アイスアイリス
12月22日現地確認予定。
07年産
促成アイリス
12月22日現地確認予定。
ニュージーランド産チューリップ
07年産
成績良好、切花相場良好。良かったです。
08年産
12月中にご注文頂けたらと思います。
作況は今の所、昨年同様良さそうです。
年明け1月からの掘り取りとなります。
オランダ産チューリップ
07年産
@プラスチック栽培球根、Turbo球根
ガンダーのスポート系はややボリューム無し。
トライアンフ、シンブルレートは良好。例年より事故が少なそう。
Aアーリー球根
順調。事故は少なそう。
B標準球
年明けの確認。
08年産
プラスチック、Turbo、アーリー球根は例年だと12月末までには価格表発行となるが、今回は1月にずれ込み予定です。
標準球は例年通り、3月発行を予定しております。
国産百合球根
07年産
新潟県産早掘り
主にドライセール用、2年連続不作となり、予定通りのサイズ、球数が、納品出来なかった。
ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。
新潟県産遅掘り
やや太りすぎの感はあるが、まずまずの結果。
夏が暑かったので、「力のある球根」になると考えていたが、10月以降の肥大が良すぎる。
「みてくれ」よりワンサイズ小さい仕事をする球根となるのでは。
小清水産
ドライ用早掘り球根、促成栽培用球根、抑制用球根、いずれも良い。
切花用球根の芽形成、葉枚分化状況も、極めて順調。
良い仕事をしてくれそう。
※ 新潟県産、小清産、共に同じ事がいえるが「球根が栽培された気象条件は?」「どの切花作型に向けられて掘り取り期が設定されているのか?」「どの切花作型に向けられて冷蔵設計されたのか?」
各産地の球根の使用方法を安易に考えないで下さい。
正しく使えば「輸入球」より、必ず良い仕事をしてくれるはずです。
「自分の都合」を優先すると、逆の結果になってしまいます。
くれぐれもご注意下さい。
南半球産百合球根
07年産
8月18日の輸出業者からの聞き取り調査によれば
NZ産 17,979,065球 受注 (日本全体)
CH産 7,877,485球 受注 (日本全体)
となっていた。合計25,756,550球。
11月末日までの植防データによれば
NZ産 18,012,175球 入荷 (日本全体)
CH産 6,986,065球 入荷 (日本全体)
となっている。合計24,998,240球。
NZ産の入荷は予定通り。
CH産は約900,000球予定より少ない。(まだ入荷終了していない?)
最終入荷数は25,300,000球前後となるのでは?
06年産との比較で約15%増加となる予定。
ニュージーランド産
ゴア産
一番早い入荷が10月15日前後。
この為、まだ生育状況が確認されていない。1月以降の調査となる。
ネイビア産
07年産南半球産では1番芽が太い。若干のふぞろい感はあるが、まずまずの状況。
今年、初めて取り扱った産地だが、球根圃場確認してきた通り、良い出来となっている。「良かった。」
ラカイヤ産
バッカー社産(PO扱い分)。まずまず。昨年よりやや劣るが逆に丁度良い。
バンザンテン社産(VZ扱い分)。あまり良くない。期待はずれ。原因は秋の天候と掘り取り後の管理の失敗。良くない原因はある程度つかめている。
バンザンテン社産の球根は日本全体で約14,000,000球強入荷。
日本全体の55%。当社扱い分3,970,000球(うちLA約500,000球)
当社におけるシェアは取り扱いの62%(オリエンタルでは59%)となっており、南半球を代表する重要な生産地となっている。
来年に向けての改善が強く期待される。
ラカイヤ産のLAの採花がすでに始まっている。
ロイヤルトリニティの13/14で芽伸ばしをした作型に、定植したもので2輪が約20%でてしまった。
(オランダ産13/14使用促成作型よりは、やはり良いのでは?)
同じサイズで、芽伸ばしをしない作型での2輪の発生率は、やや少なくなりそう。
やはり13/14サイズは10月15日以降の芽伸ばししない定植期が良いと思う。
高温期定植の作型では、14/16サイズが良い。
13/14サイズでも、オランダ産冷凍球14/16サイズとは、比べ物にならないボリューム感となっている。
通常、オランダ産14/16、16/18サイズを8月上旬〜8月下旬に芽伸ばしして、定植した場合、埼玉深谷地区では、36〜39日ぐらいで採花となる。
対して、NZ産は同じ定植期で約48日かかっており、到花日数は明らかに長い。
この事により、ボリューム感が維持されている。
今後の品種数増加に期待したい。
チリ産
ロスアンジェルス産
品質改善されてきている。良い。
バルデビア産
品質改善されてきている。良い。
今年の球根栽培時の天候のわりには、良い仕事をしてくれている。栽植密度を広げてきた効果か?
オソルノ近郊産
1月以降確認。
ピュエウエ産
品質改善されてきている。良い。
昨年の惨憺たる結果に対して、今年は「良くぞここまで改善した」、というぐらい良い印象。
特に、夏の天候は昨年同様、涼しかったのに、こんなに太くて輪付きが良くなっているのは、ちょっと「意外」でした。(供給したVdb社、PO社、共にこの結果を予想していなかった為、びっくりしている。)
理由としては、やはり裁植密度を広げた事と、掘り取り6週間前ぐらいから、地温が比較的高めに推移した事が、芽形成に良い影響を与えたのではないかという分析となっています。
9月末〜11月いっぱいの植付けでは良い結果が出そうです。(促成向きの球根。)
12月〜1月末もなんとかこのまま「球根の力」を維持してくれればと願っています。(抑制向きの、球根栽培時気象条件でなかったから。)
08年産
07年産オランダ産百合球根市場の混乱から、輸出業者は08年産南半球産の取引を、遅らせたいと考えている様です。
価格形成を行うのには、年内は厳しいという事の様です。(現状のオランダ産の価格に引っ張られてしまう。)
07年産オランダ産やフランス産の掘り取り結果が、はっきりわかってから、取引が開始される予定です。
(一部NZ産LAハイブリッドについては、VZ社販売戦略の都合上、早くもほぼ売り切れている。)
P.Fオーニングス社の分析によれば
単位:ha
掘り取り年 |
オランダ+ベルギー+フランス のオリエンタル・OT 開花球栽培面積 |
掘り取り年 |
ニュージーランド・チリの オリエンタル・OT 開花球栽培面積 |
合計 |
00 |
2,120 |
01 |
260 |
2,380 |
01 |
2,330 |
02 |
350 |
2,680 |
02 |
2,500 |
03 |
410 |
2,910 |
03 |
2,280 |
04 |
470 |
2,750 |
04 |
2,030 |
05 |
510 |
2,540 |
05 |
2,310 |
06 |
555 |
2,865 |
06 |
2,600 |
07 |
595 |
3,195 |
07 |
2,530 |
08 |
※600 |
※3,130 |
※08年の南半球産と07年産北半球+08年南半球産の合計はあくまでも推定値。
2002年産北半球産+03年産南半球産の合計面積である2,910haは、生産過剰であった事がわかっており、(中国市場の拡大期待から、増加してしまった。皆が過剰に気付いたのは、随分遅かった。輸出業者は、翌年の営業年が大赤字となった年として記憶されている。)
06/07オランダ産、07/08南半球産までは、世界市場に対して、オリエンタル系球根は過剰生産という分析となっている。(天候不順や掘り取り放棄などの変動要因はあります。)
世界規模で、人気生産地、人気品種、不人気品種など、状況は様々だが、冷静な対応をして頂きたいと、考えています。
オランダ産百合球根
06年産
日本全体では、約142,000,000球輸入(前年比3.5%減少)となった。
南半球産との入れ替えが進んできている。
一部輸入会社の、過剰輸入によるダンピング状況や、当社のコンテナ事故の大欠品があったにも関わらず、06年産オランダ産は、球根の不足感が感じられなかった。もう少し減っても大丈夫なのか?
日本中の切花産地の作型切り替えが順調に進んで欲しい。
過去5年間の当社における、対輸出業者に対しての、当社からのクレーム率は
02年 1.16%
03年 1.80%
04年 0.77%
05年 0.98%
06年 0.94%(コンテナ事故処理額は含んでいない。)
過去5年間の平均 1.13%。
となっており、2番目に少ない年となった。
コンテナ事故さえなければ、悪い年ではなかったと思う。
07年産
球根生産時、
春の天気は良かった。
夏の天気は悪かった。
秋の天気は品質(外観)の為には良かった。
球根糖度の上昇速度は、昨年比、明らかに早くなっている。芽の位置も高い。(夏、秋が涼しい。)
糖度最高到達点は、昨年より低くなる予定。(夏が涼しい。)
青カビ、燐片腐敗は、減少する予定。
長期冷蔵には、不向きな球根となる予定。(糖度が低い。糖度上昇が早い年は、下降するのも早い。)
鉄砲百合
世界的に不足となる。特にホワイトフォックスは不足。
透かし百合・LA
世界消費、特に南アメリカの伸びが大きく、球根価格は大きく変動していない。
ただし、生産はすでに過剰一歩手前まできている。
「どんな品種」でも、全部売り切れる状況ではない。
不人気品種は、輸出業者レベルで、「痛い目」に合う会社が出そう。(不良在庫。)
セベコデジール、ロイヤルトリニティ、セラダ、パビア、そして特に白系のクーリアなどは早く買った方が良い。
オリエンタル・OT
すでに南半球産の所でも報告したが、明らかに過剰だった。
オランダの球根農家の本年の経営状態は5億円の経費をかけて、5億3千万円から5億円5千万円の売上げを見込んでいたのに、3.5〜4億円しか売上げがたたないというのが、平均的な状況となる様子。(ましな人もいれば、もっと悪い人もいる。)
これほどひどくはないが、02/03年のオランダ輸出業者の経営も、似かよったものがあった。
95/96年の日本の輸入球根業者の収支も、かなりひどかった。
今回、9日〜12日のたった4日間だが、オランダに出張/研修案内をしてきたが、研修者の反応は面白かった。
昭和20年代から50年代後半、オランダ産球根が隔離免除になるまで、堀之内、津南、新津とも切花よりも、むしろ球根生産を正業としていた農家の息子や、孫達が、研修に参加してくれたからだ。
この世代は、平成の園芸バブルを知っている人が何人かいたし、まだ就農したばかりで、今の切花低迷期しか知らない人もいた。
球根切花先進地のオランダに来ていながら、自分達の産地が50年前に経験した球根大暴落を、再度確認する事となった。
オランダの百合球根栽培農家は、この20年間の間に、約600件から200件に減少してきている。
(逆にトータル栽培面積は、大幅に増加させている。)
すさまじい規模拡大と、国際競争力の向上、経営の安定化を計ってきた。
その努力も、今年の苦境ではさらなる農家数の減少を、引き起こすかも知れない。
1件当たりの経営規模を大きくする=コストダウンする事だけが、「生き残りの道」ではない。
農産物である球根(あえて種苗とはいいません)は、消費マーケットの状況を正確に掴む事。
いくつもある変動要因を、柔軟に吸収できる経営規模であるべき事が、様々な作業現場の状況や、今回訪問した農家の心理から再確認出来た。
取り引きする相手や国も、しっかり見極めなければいけない。
昭和33年、その暴落を引き起こすきっかけを作った堀之内産姫百合球根を扱っていた会社で、現在も営利栽培家向け球根を扱っている球根業者は、もう1件もいなくなった。
オランダ産の球根が、隔離免除になった時、新潟県産の球根をたたっきった会社も、営利栽培家向け球根販売業から撤退した。
球根農家は、簡単にギブアップしない、思ったよりも元気だった。叩かれ強い堀之内の切花農家みたい。
好きでこの仕事を選んだのだから、頑張る奴は頑張りますよ‼
08年産
本当はまだコメントしたくない。
あくまでも「現時点では」、という事で
鉄砲百合は 60〜70%
透かし・LAは 60〜70%
OH・OTは 70〜80%(品種により状況は違う。面積の動きに注意。)
の初期導入計画を年明けの2月〜5月の間に行ってほしい。
そんな生産状況になると思います。
1997年の7月に書いた情勢報告以来、久しぶりの長い情勢報告となりました。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
以上
森山 隆