平成17916

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球根情勢報告

 

 

オランダ出張報告「9月6日〜9月9日」

 

平素よりお引き立ていただき大変ありがとうございます。

 

暑さ厳しい夏も過ぎ、魚沼もずいぶんと秋らしくなってまいりました。

今年も台風その他、気象災害にみまわれ世界各地が大変な年となっております。

 

新潟県内平山間の切花産地では、7月の2週間分が8月にずれ込み、9月の2週間分が8月に進んで出荷されてしまうという現象が起きてしまいました。雪解けの遅れで4週間近くも営農期間が短くなっていましたので農家の方々は今までに経験したことのないストレスフルな条件の中でお仕事をされているかと思います。

そのような状況の中で頑張っている姿には本当に頭が下がります。報道にあるアメリカの気象災害にみられる住民と行政対応を見るにつけ、「日本の農家」は本当に強いなと改めて思います。そう思うと、張り合うわけではありませんが「自分たちも頑張らなければ」と改めて思う次第です。

 

 

オランダ産百合球根

 

05年産

 

作況及び品質  

 

3〜6月 順調でした。

 

7〜8月 不調でした。

 

8月20日以降 7月、8月は肥大の為・品質の為には劣悪な環境となっており相当な心配をしましたが気象条件は現在、最適の状態となっています。肥大遅れも回復しつつあり、この気象条件が1020日頃まで続けば良い作になるかと思います。(もう1ヶ月はこの天気が必要)
品質については、遅太りの年はあまり良い事は無いのですが(05年産はこのパターン)、幸い、養成球不足の為、栽植密度が58%も薄く植え付けられていますので天候不順によるマイナスを相殺してくれるのではないかと期待しております。
ある程度の傾向が掴める10月以降の気温の下がり具合を見てからの判断となります。

残念ながら、鉄砲百合のホワイトヘブンでサマースプラウトがかなりの高い割合で確認され始めています。(サマースプラウト、夏季萌芽、ちょうちんと言われる生理現象)

 

流通状況

 

球根は「種苗」ですが様々な意味で「農産物」の色彩が強く、私自身、感覚的には80%以上「農産物」を扱うつもりで仕事をしております。「種苗」と捉えてしまうと間違った経営判断をしかねないからです。510年という長いタームでみた時、初めて「球根=種苗。そして種苗販売」と考えるべきです。

(ここが他の切花種苗と違う一番のポイントです。)

 

 透しLA鉄砲百合

 

@     栽培面積減少

A     ユーロ高ドル安傾向(ヨーロッパからアメリカへの切花輸出減少)
アメリカ及びUSドル圏の切花生産国が、透しLA鉄砲及びオリエンタルの10/1212/1414/16
サイズを大量購入。切花生産量を大きく伸ばす予定。(89月にかけて大量受注。)

B     イギリスを中心としたスーパーマーケットの需要は当然ホームユーズが中心。
従って、本年は球根不足によるオリエンタルの切花価格が高水準で推移した為、切花納品業社が大赤字となってしまったそうです。その為、来年は透しLAに品目変換を行う予定だそうです。

C     鉄砲百合はサマースプラウトの多発がほぼ間違いなく起こる。この為、価格上昇となる。

     従って、球根価格はやや上昇傾向です。掘り取り後に、輸出業社の販売計画に当てはまらない球根が出てくれば安い物も出回るかもしれません。しかし、それはあくまでも計画外流通品という事です。切花の「セリ前取り引き」と「そうでない流通」に似ていますね。

 

 オリエンタルOT

 

@     23月契約分がどうやら一番安かった様です。(それでも球根農家は十分再生産に繋がる価格帯です。)

A     3月中旬以降は価格上昇し続けている。(農産物の需給バランス)
※ 今の所、生産面からは価格が下がる要因は無い。

B     中国市場は球根が高すぎるという理由でやや導入を控え気味。来年の58月は切下球切下養成球
からの切花になるのではないかとの分析をする輸入業社がいる。(中国、台湾の輸入業社)

 

C     中国市場が残り1525%(03年産との比較で、04年産は既に減少傾向だった)の輸入量を減らしたとしても、少なくとも人気品種については23月の価格帯に戻る事は無い様に思える。
(それだけ世界中に需要拡大している)

 

※透しLA同様、計画外の生産流通品が価格動向に与える影響はあるかもしれませんが、それらの動きを正確に予測する事は不可能です。
安定価格と言われる球根そして切花は「農産物」ではありますが、「嗜好品」にまでその価値を高めて「買い手にとって良い原材料になれるかどうか」が「カギ」ではないかと思います。

 

 

今、オランダの球根農家は・・・(一般論)

 

 秋植球根(チューリップ、ヒヤシンス、クロッカス、アイリス、水仙など)

 

 23年連続して、損益分岐点ギリギリからやや赤字傾向が続いています。

 

 

 

自己資本比率が高い経営を行っているのがオランダの球根農家ですので何とか耐えていますが商品としての球根の「価値観」を下げており「低価格・低コスト」に走りすぎていて、回復の兆しは中々見えてきません。大変です…。

 チューリップは、百合球根の生産流通とはまったく違い「自己完結型」なので多くの大規模農家が自作球での切花を行っています。割合は分かりませんが、オランダにおけるチューリップ切花の大半が「チューリップ球根農家=切花農家」の形をとっています。これにより経営収支のバランスを取っています。

 

 透しLA鉄砲百合

 

 大きく2つに分かれます。

 

@       オリエンタル系の生産を主力においている農家が作る透しLA球根。
冷蔵庫、倉庫、機械類その他の為の償却資産取得が莫大に行われている。営農期間の長期化を図る
為に生産は継続しているが、それら農家は生産を委託農家に委ねるケースが多くコストがどうしても高くなる為、透しLA単独でみると利益は出にくい。
真面目に母球管理さえしてくれれば、彼らの商品管理能力は平均的に高い。

 

A       オランダ東北部の農家が作る透しLA球根(ジャガイモ、シュガービート、玉葱などとの複合営農)

安くなってもまだ他に比べれば、透しLAの球根栽培の方が利益は高い様子。
1品種で24haもまとめて作ってしまう所が、いかにも露地大型営農を行っている農家らしいやり方。
単純化傾向が強まるが、新鮮な土地で低コストでの生産が可能なので品種導入や生産計画を「買い手」としっかり組んで行えば良い球根を作れるはず。こちらの方が今は伸びている様です。

 

 オリエンタルOT

 

育種会社の話によれば、約200250件のオーナーがいるそうです。(オーナーとは球根農家、大型切花農家=4百万本〜25百万本クラス、育種会社、一部輸出業社=バンザンテン社などがなるケースが一般的な様です。)オーナーは各々の品種の栽培権を保持し母球管理を行っています。またオーナーは販売責任を負っています。ほとんどの場合、オーナーになる様な大規模な球根農家は球根の肥培管理は委託栽培で行っています。

オーナーになる様な球根農家が自身の圃場でオリエンタルOT系の球根の栽培を行っているのは全体の約1525%しかありません。(極少量品種、母球維持、燐片養成など)ほとんどの場合、委託農家が栽培した球根は、大型の施設を有しているオーナー農家に素堀りのまま納品され処理されるという流れになっています。

 

一部の大手切花農家は、母球管理と生産管理を大型球根農家に委託、球根保管管理を輸出業社に委託という形も出てきている様です。

この場合、切花農家は12/1424/UPすべてのサイズを消費する事になり、よほど大規模でないとこの形の採用は難しい様です。

委託農家は約80100件あるそうです。

多くのオーナー会社は、北海沿岸部に在しています(古くからチューリップ、ヒヤシンス、水仙などが生産されていた地域、自己資本率の高い農家)。

委託農家は土地が安くて大型営農がしやすい環境、そしてオリエンタルに適した気象条件であるオランダ東北部から東南部に在しています。

 

オーナーはその規模により違いはありますが、210件の委託農家に球根生産を行ってもらいます。

委託農家はこれもまた規模によりますが、26件のオーナーの球根生産を受託しています。

オーナーの立場から考えれば、オリエンタルOTにとって新鮮な土地が確保できます。(オリエンタルは輸作のきかない農産物です。おのおのの地域でその土地の農家と一緒に良い土地を探せる)なおかつ、各地の気象変動のリスクも分散できます。

委託農家の立場から考えれば、とぼけた失敗をしてしまったオーナーの球根のみしか作っていなければ自身の経営にも悪影響が出るわけですので複数のオーナーの球根を作った方がリスク分散につながります。

委託農家とオーナーの関係は常に良好でなければいけませんが、同じ農家に委託しているオーナー同士の関係は少し微妙な様です。

 

「業務を分散して専門化を図る」というやり方は、それぞれの経営規模により違いはありますが、「大規模農家」ほど品質の良い球根を安定的に生産し、大規模な輸出業社ほどその販売スケールから品質の高い球根があつかえると言う考え方は、この流れの中にある様です。(510年で考えた時)この考え方は、自己完結型営農が一般的なチューリップなどの秋植球根にはまったく当てはまりません。

 

チューリップ球根を販売する輸出業社は100200件もありますが、「本気で百合球根を専門に扱う輸出業社」はいまや20件もありません。

 

自分自身、再確認した思いですが、1980年初頭から外国産の種球を導入し新潟県内各地で委託栽培を行い素掘り球根をすべて自社にて選別・箱詰めを行う、そして販売責任はすべて自社で行うという当社の生産販売スタイルと極めて似た生産流通体系となっていました。どうやら、山喜農園の方がこのやり方を始めたのはオランダより早かった様です。この点が当社が生産販売会社と自負できる「基」となっています。

 

グラジオラス、その他露地球根

 

調査・勉強不足の為、コメント出来ません。

 

以上、出張報告でした。ありがとうございました。

 

                                            森山 隆