平成16年9月13日

お客様各位

株 式 会 社    山 喜 農 園

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球根情勢報告

 

 

 平素よりお引き立ていただきありがとうございます。

 

 

 9月3日〜7日までオランダ出張に行ってまいりました。今回の情勢報告でお伝えしたいことは「球根流通情勢が過去3年間とは大きく変化するようだ」ということです。

 

@98年産〜04年産のオランダ産百合球根の受発注パターン

                                       (単位:1,000球)

 

98年産

99年産

00年産

01年産

02年産

03年産

04年産

各年の8月末までの発注数

45,945

47,077

46,032

35,600

37,100

36,350

35,884

 〃 8月末までの受注数

38,624

41,333

40,004

33,900

36,300

34,050

31,850

 〃 8月末での帳面在庫数

7,321

5,744

6,028

1,700

 800

2,300

4,034

 〃 9月 1日以降の受注数

8,946

6,917

5,846

9,600

8,100

12,250

未定

 〃 オランダ産最終受発注数

47,570

48,250

45,850

43,500

44,400

46,300

未定

 〃 南半球産最終受発注数

130

1,350

2,450

3,500

5,900

5,000

5,850

 〃 総合計受発注数

47,700

49,600

48,300

47,000

50,300

51,300

( 未定 )

  ※98年産の南半球産は隔離栽培球根

  ※04年産は9月10日現在

 

 遡ること90年〜95年までは、球根は早期発注/早期受注が当たり前に行なわれていました。95年/96年の過剰輸入の経験から急激に輸入量を減少させた97年産を経て、98年〜00年産にも水害等の影響もありましたが、早期発注/早期受注という取引を行なっていました。

 

 01年産以降、発注も受注も明らかにそれ以前とは違う取引状況となっています。これはオランダ産球根の過剰流通期であり、価格下落に対しての警戒感から球根確保期を遅らせ気味にしてきたということでしょう(その時は意識していませんでした。むしろ南半球産球根の流通量増加の予測から、切花農家の皆様が栽培計画を変更したことによる注文期の変化と考えていました)。

 

 ご注目いただきたいのは、03年産と04年産の8月末時点の帳面在庫数の増加です(良品質球確保を進める)。残念ながら、03年産については球根価格の暴落が起きたため、結果的に逆鞘で販売することとなってしまいましたが、03年産は既にお気付きのように、近年では日本国内の流通在庫が最も少ない年となっているはずです(7月末までの輸入統計から、03年産オランダ産は全体で3,500,000〜4,500,000球ほど輸入量の減少が見込まれている→当社自身、約1,900,000球増加していたため、この減少は予測していなかった)。

 

 04年産の当社発注は、切花農家からいただく注文よりもやや早めに確保を進めていた98年〜00年の動きに近付きつつあるようです(売り切れ/価格上昇を予測していても需要が多様化しているので、お客様からの注文無しでは今以上の在庫は作りにくい)。

 

A球根生産状況

 9月3日〜7日までのオランダ出張期間中、約200ha強に相当するオリエンタル/O.T.圃場を見てきました(前回6月に廻った圃場と一部重複させた)。オランダ北東部/北西部/東南部/南部と、ほぼ全域を廻ってきたつもりです。鉄砲百合/透かし百合/L.A.については、それ専門に作っている農家のところには今回は行きませんでしたが、半分以上の圃場がオリエンタルと並んで生産されていましたので、やはり百数十ha分は確認できました。

 

 栽培面積がそれぞれ大幅に減少していることに加え、低温傾向だということ、雹害が出てダメージを受けた畑があること、8月の集中豪雨など、心配させられる情報が多かったため、随分心配していました。

 

 実際に畑を廻ってみて、「全然悪くない」「昨年よりも圃場の見た目は良い」というのが第一印象です。情報どおり被害を受けている圃場もありました(雹害/湿害)。それらは一部地域で局地的に発生している問題であって、オランダ全域の問題ではないようです。拍子抜けだったのは湿害についてで、3月/4月の天候が定植前の圃場整備に大変適した環境だったようで、集中豪雨の被害を最小限に止めたばかりか、むしろ優秀な農家によっては「昨年は通常の2倍から3倍の潅水を行わなければならなかった」のが、今年は平年の1/3くらいの回数で済んでいるので、球根のためには良かったという人もいるくらいでした。別途示したように、平年の降雨量/日照時間/平均気温と比較しても、それほど大きく違っていません。対して、03年の気象条件がいかに異常であったかがわかると思います(業者情報は昨年と比較しての話だったように思いました)。

 

 勿論、今後9月/10月の天候が肥大や品質に最も大きく影響してきますが、現在までのところ作況についてはまずまずの年ではないかと感じました。

 

 注目すべき今年の特徴が一つ確認できました。既にご報告させていただいているとおり、03年産オランダ産百合球根については「健全球については近年でもごく優秀な品質」といえると思いますが、残念ながら青黴/燐片腐敗、そして「様々な理由による不発芽」が確認されている年にもなっています(酸欠・掘り取り前/掘り取り後)(冷蔵障害・掘り取り前/掘り取り後/保管期間中)。

 

 同様に現地球根生産圃場においても、特に小さいサイズの養成球からの生産圃場で、かなりの不発芽があるようです。「全体の定植密度が薄く見えるほど」とはいいませんが、結構な数となるように感じました。加えて3月〜5月の過乾燥の影響もあったようです。

 

 このことから、全体の作況が良くなったとしても、面積当たりの収穫球数が大幅に増加することは無いように思われます。

 

 

 

 

 

 

 

Bオランダ球根農家の経済状況

 過去数年間、球根販売価格低迷または未販売圃場廃棄などの劣悪な状況が続き、経済的には酷く悪化してきているようです(当然、農家ごとに良い人と悪い人の差はあります)。今回オランダ出張期間中で一番ショックを受けたのは、北部オランダ地区の球根生産地帯(従来、経済力のある球根生産農家が集中していた地域)の銀行が今の状況に大変困惑しているという話でした。夏掘り球根であるチューリップ/クロッカス/ムスカリ/水仙など、ヒアシンス以外の品目は利益の出る水準にはとても到達しない状況だったようです。銀行から見た取引懸念先が、品質的に優秀と思われる農家の中にすら出てきつつあるようです。

 

C04年産オランダ産球根の今後の売れ行き

 品目によりかなりの偏りが出そうです。

 

 透かし百合

 12/14 = アメリカマーケット好調のため、良く売れるであろう(買いです)。14/16 = まあまあ、16/18,18/20 = 売れる気配無し。白系のみ全サイズ過剰感がある。

 

 L.A.

 14/16 = 世界的な需要サイズ、良く売れる(買いです)。12/14 =このサイズが使える品種は売れる(買いです)。16/18・18/20 = 売れる気配無し(ただし、ロイヤルトリニティの16/18は買い)。

 

 鉄砲百合

 ホワイトフォックスは価格固定種なのでとりあえず動かない。その他の品種は全サイズ過剰感(サマースプラウトが多いようです。従っていずれ売れるはずですが、今はまだ余裕があります。掘り取りが始まる今月末あたりから価格が動くはず)。

 

 オリエンタル

 10/12,12/14 = 生産者が売りたがらない。05年産のために養成球として確保。14/16 = 中国消費次第。現時点の価格で買うかどうか?16/18,18/20 = 色物。どこまで価格が上昇するのかわからない。今が上限であってほしい(ただし、一部の品種で春先の価格に戻る品種もあり)。20/+以上が必要な品種 = 売り切れもしくは売り切れ近い。

 

 O.T.

 イエローウィン 当社受注バランス(オランダ産について)

         14/16   16/18   18/20

   03年産  29.0%  56.7%  14.3%

   04年産   9.3%  66.8%  23.9%

 

 輪付きの良かった03年産の結果を踏まえても、ボリュームと蕾の大きさを確保するために(蕾を減らす技術併用)、大球にシフトしてきたようです。14/16, 16/18で価格上昇。多分まだ上昇します(18/20サイズはそれほど上がらない)。

 

 コンカドールは当初価格が安すぎたので上昇しました。その他のO.T.系の動きはよく見えてきません。黄色有望種の試験導入をお願いします。

D03年産オランダ産球根出庫状況での問題点

 すべてのロットではありませんが、コンカドールとリアルトの腐敗/不発芽事故にはほとほと嫌気が差しています。長期保管に弱い品種の代表といってもよいかもしれません。この2つの品種で厄介なのは、何故不発芽が起きるのか原因が特定されていないことです。既存の問題種であるルレーブ,マルコポーロ,メデューサ,シンプロンのように何故弱いのか原因がある程度わかっていれば、作型等でのリスク回避もできるのですが…。今後改善の可能性があるのかどうか、まったく検討が付いていません。

 

 

 

 

 

 

 

 

E04年産南半球産オリエンタル系球根流通状況について

当社状況

 ニュージーランド産 約75% 船積完了

 チリ産       約71%   〃

 

 チリ産ソルボンヌ18/20以上のサイズ,ベルニーニ全サイズ,ティバー全サイズ、入荷やや遅れる見込み

 

着荷確認

 N.Z.産(ラカイヤ産)

1,600ケース入荷

球根見た目が良くない

 

 C.H.産(バルデビア産)

1,600ケース入荷

球根見た目良い。芽がやたら大きい。ややサマースプラウト気味に見える(まだ早生系しか確認できていません)。

 

 

全体の動き(日本国内)

 7月/8月に莫大な欠品報告が入ったことはご存知のとおりですが(当社の例だと、6,000,000球→5,000,000球以下に減少)、その後サイズ変更/品種代替等が行なわれ、5,850,000球まで回復しました。本年3月27日の段階で約15,300,000球販売の見込み(8輸出業者聞き取り)でしたが、9月1日に6輸出業者より聞き取り調査を行なったところ、14,853,225球販売見込みとのことです。今回調査に間に合わなかった3社の合計はわかりませんが、概ね15,000,000球〜15,500,000球入荷と見込み、前年の入荷数は約12,000,000球なので、前年比で3,000,000球〜3,500,000球の増加となります。

 

 あれだけの欠品騒ぎをしていたのに、ここまで回復してきたのには驚きました。03年産オランダ産の予測減少数とほぼ同数の増加球数となるようです。03年産のような障害多発が懸念される年には、この南半球産増加はタイムリーといえるでしょう。ただし、04年産の南半球産球根の保管性にも多少心配なところがありますが…。

 

Fまとめ

 今回の出張報告/情勢報告のメインは、04年産オランダ産百合球根についてでした。本年は「早く買った人が損をしない年」となりそうです。私自身ようやく「また下がったらどうしよう」という気持ちが薄れ、「やはりきっちりと確保しなければ」ということが再確認できた出張視察となりました。

 

 繰り返しになりますが、「在庫」を作るのにも限度があります。

 

 ご自身で必要な品種/球数で確保が済んでいない方は、お早目に導入検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 

 

以上、情勢報告でした。詳細についてはお問い合わせください。

 

オランダの気象推移 2004.09.10.
     降雨量
    平均降雨量 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1月 66 80 96 41 70 78 77 123
2月 48 23 70 102 90 139 29 79
3月 63 117 86 79 74 33 24 42
4月 52 98 62 39 87 49 46 33
5月 61 45 52 85 29 35 92 31
6月 68 181 89 60 54 85 34 69
7月 75 79 37 99 87 97 30 122
8月 71 72 94 43 116 112 9 127
8月までの合計 504 695 586 548 607 628 341 626
9月 67 149 68 69 211 32 52
10月 72 179 43 106 41 91 84
11月 81 140 60 118 85 83 40
12月 80 77 146 92 94 89 96
合計 804 1240 903 933 1038 923 613
    日照時間
   平均日照時間 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1月 47 70 66 56 72 76 66 47
2月 73 110 95 107 91 116 158 80
3月 107 92 109 80 63 176 199 125
4月 153 91 184 154 145 197 228 168
5月 197 206 231 210 277 195 192 210
6月 192 150 226 232 203 194 254 173
7月 187 148 253 123 216 184 225 180
8月 185 188 166 212 196 157 227 191
8月までの合計 1141 1055 1330 1174 1263 1295 1549 1174
9月 134 118 149 115 113 159 194
10月 103 50 117 98 119 122 148
11月 55 77 74 61 63 71 69
12月 43 54 51 69 65 43 62
合計 1476 1354 1721 1517 1623 1690 2022
      気温
     平均気温 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1月 2.2 4.7 5.2 4.2 2.6 4.4 2.5 3.6
2月 2.5 6.4 3.1 5.9 4.5 7.1 1.8 4.8
3月 5 7.6 7.3 6.8 4.9 7.2 7.3 5.9
4月 8 9.4 9.8 10 9.8 9.3 9.9 10.4
5月 12.3 14.9 14.2 14.7 14.1 13.4 13.2 12.3
6月 15.2 15.8 15 16 15.2 16.5 17.8 15.5
7月 16.8 16.3 19.1 15.5 18.5 17.6 18.8 16.7
8月 16.7 16.5 17.5 17.4 18.5 18.6 19.3 18.8
9月 14 15 17.4 15.8 13.4 14.6 13.9
10月 10.5 9.9 10.6 11.3 14.2 9.5 7.5
11月 5.9 3.7 6.7 7.8 7.1 7.9 8
12月 3.2 4.6 4.8 5.1 2.9 2.9 4