平成16年6月11日
お客様各位
株 式 会 社 山 喜 農 園
新潟県北魚沼郡堀之内町原1280-1
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球根情勢報告(修正版)
平素よりお引き立ていただきありがとうございます。
今回の情勢報告は5月中旬のオランダ出張及び6月上旬のチリ出張を踏まえ、百合/チューリップの情勢報告のみとさせていただきます(関連する国産百合についても若干)。
オランダ産チューリップ
04年産
作 況 |
順調。普通作となるのではとの予測。1990年以降では3番目に寒い5月だったとのことで、休眠打破時期等の予測はまだ立ちません(6月に入って気温が上昇している)。 |
販売状況 |
世界的に非常に取引が遅いです。昨シーズンのヨーロッパ市場の切花価格低迷が大きく影響し、ただでさえ不調なドライセールマーケットと重なり合い雰囲気は最悪でした。ほとんどチューリップの話を出す輸出業者はいませんでした。今月に入ってドライセールにもようやく動きが出てきたそうです。 |
当社の状況 |
南半球産/国産を含め約 6,750,000球受注(6月9日現在)。傾向として、埼玉県深谷地区ではチューリップから透かし百合/L.A.に変更される方が多く、かなりの減少となる様子です。生産を継続される方でも85%〜95%くらいの発注量となるようです。 一部市場との協議を行ない、作期/品種構成を事前に決めた生産取り組み計画が実験的に始まります(約 250,000本)。 新潟県は現時点でやや微増となっていますので、少し増加するのではと予測しています。 昨シーズンの市況展開から予測はしていましたが、11月/12月切花出荷用の特殊コンディションの球根注文量が激減しています(1月〜4月出しは増加する見込み)。上記した情勢を踏まえ、最終的な取り扱い球数はやや減少するという予測です(ただしドライセールの動き次第)。 |
国産百合
03年産
早掘り |
コンカドール,ビビアナなどで輪付きの悪いロットがありました。 |
遅掘り |
ソルボンヌの一部にリーフネマトーダが出たロットがありました。概ね順調、輪付きについてはまだわかりません。 |
04年産
早掘り遅掘り |
3月/4月の定植後、一時高温に見舞われましたが5月になってから曇天と比較的降雨量が多かったためか、生育は順調です。赤塚地区にて第1回目のバイラス抜きを実施しましたが、きれいなロットが多く3%以上のバイラスによる抜き取りをしなければならないロットは確認されませんでした。津南,大和地区もほぼ同様の結果となっています。今週から赤塚地区において2回目の抜き取り作業に入りましたが、シベリアなどの遅い品種で1回目には確認できなかったものを抜いているという状況です。 |
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販売状況 |
作付け量を減らしてあります。少々驚いているのですが、ドライセール用球根の注文が早いです。当社なりに品質重視型生産を行っているつもりなので、委託農家への栽培料は安くありません(原価の最大のポイント)。したがって、販売価格は必ずしも安くないと自分自身考えていましたが、おかげさまで順調に推移しています。価格には特に厳しいドライセールマーケットからの注文をいただけていることには大変感激しています。 |
南半球産百合
04年産
当社状況
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発注数 |
約 5,900,000球 |
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受注数 |
約 5,800,000球 |
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在庫数 |
約 100,000球 (うちソルボンヌ チリ産75,000球含む) |
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取扱量が02年産の水準まで回復する勢い。全国的にも15%〜20%ほど前年を上回る見通し。主に12月下旬〜1月下旬定植用の需要増加となる様子。
5月末から6月5日に掛けて出張確認してまいりましたが、チリでは作が良さそうです。後段で報告する04年産オランダ産百合球根の価格情勢の影響を受けて売れ筋品種は価格が上昇しています。ニュージーランドの南島の一部の地域で作況不良との情報も入っており、現状ではこの価格帯が正しいものかどうかはわかりません(先行き上昇するのか下降するのか)。再び特異気象条件での球根栽培が行なわれた年となったようで、品質予測と球根特性の考察と合わせて、価格動向分析にはもう少し時間が掛かります。全般的には作況予測が良好のため、売り切れていた品種が再び受注可能となってきました(ソルボンヌ,ルレーブ,メデューサ等)。
オランダ産百合
03年産
納品状況
取り扱い予定数の約55%の球根を出荷しています。今のところ「03年特有の傾向、問題点」は発生していません。カビ,芽伸び,根座腐敗がシビアに出てしまったロットはありましたが、それが全体傾向といえる水準ではありません。少し混種が多いようです(箱単位のレッテル貼り間違い等)。
切花状況
若干の不揃い感があるようですが、草丈/輪付き等の問題指摘はされていません。
球根輸入状況
6月8日付発行の輸出統計(速報値Dutch P.T.)に大きな間違いがあった様子です。再調査/再発行するのを待たなければなりません。
04年産
1989年〜1993年の4年間(隔離検疫免除制度がスタートした直後で第一期球根暴落期前)に行なわれていた取り引きの状態に戻ったようです。輸出入業者共々大変慎重な動きとなっています。
04年産の価格表は発行が大幅に遅れ5月上旬となりましたが、今月の在庫表作成も大変難しく苦しんでいます。
当社の場合、 |
前年取り扱い総数の約55%発注 |
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前年同時期比較で 約72%発注 |
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前年取り扱い総数の約40%受注 |
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前年同時期比較で 約62%受注 |
となっております(6月9日現在)。
透かし百合
静かです。気が付いたら売り切れとなっていた品種がいくつか出てきました(生産量減少の影響)。必要な品種は価格が妥当と判断されたなら確保してください。特にモナ,ポリアナ,ベイトリックス,リガタEVR,ブルックリンなど、日本の市場要求である「花が大き過ぎず輪付きの良い2倍体の品種(病気に弱い)」は世界的に消費が減少傾向です(3倍体はまだ大丈夫?)。「日本が買わなければ生産が無くなる」というくらいの意識が必要ですし、市場にもアピールしてほしいところです。
L.A.
まずまずの受注状況です。花色も随分鮮やかなものが増えてきました。また、花持ちも相当改善されてきています。透かし百合同様ようやく「品種」で買われるケースが増えてきました。デジール,グロウ,ゴールデンタイクーン,セラダなどがポリアナ,ギロンデを中心とした黄透かしの面積激減を踏まえて動きが良いようです。オレンジ系の新品種(今まで良い品種が少ない)及びロイヤルトリニティの動きが良いようです。白/赤については「必要量を確保する動き」となっているようです。イタリア市場の影響を最も受ける花色であるアプリコット系については下げ基調、低品質のオリエンタル切花と競合してしまうピンク系についても既に球根価格が抑えられているにもかかわらず、一部の新品種を除き動きは出てきていないようです。
鉄砲百合
静かです。平坦な動きとなっています。
O.T.
この品目からようやく、黄色以外の花色で注目される品種が出てきました。濃ピンクから赤色に近い、今までオリエンタルには無かった花色であるロビーナとドナトです。球根は高いですが是非導入試験していただきたいところです(マークリリー社より)。
オリエンタル系により近い草姿/花型を黄色以外の花色で発表してきたマークリリー社は、この分野だけでなくオリエンタルでも近年ウィレクアルベルティ,マレロ,マーロン、L.A.ではゴールデンタイクーン,オレンジタイクーンなど日本向けの品種を紹介し始めています。
リリアンデ系のO.T.の中からもビサベルサ,グルーワイン,メイウッドなどのピンク系や複色系のニンフなども出てきていますが、試験される場合でも少量の導入をお勧めします(よくわからないので)。
マークリリー社は、先行していたヴレッター社,リリアンデ社とはまったく違うアプローチで一気にO.T.市場に参入してきた感があります。球根栽培農家が球根生産の試験をしっかり行ってくれていることも、他の2社のO.T.系に比べて良い点だと思います。
黄色については、2大品種であるところのイエローウィンとコンカドールの消費が国際的にはまだ定まっていないため過剰感があり(日本より黄色O.T.のマーケティングが進んでいる国は無い)、昨年の暴落価格以下の価格でスタートすることになりました。上昇の気配は見えません(イエローウィン14/16がやや上昇ムード)。いくらなんでも安過ぎなので、そう遠からず動き出すとは思いますが…。
ヴレッター社
黄色以外の花色の発表はまだありません。第一世代でコンカドール,タラゴナ,コードディヴォアール,ベセノ,コモロ,マニサなどの中からコンカドールとマニサ、第二世代でビナデルマール,バルデマール,バルパレイソ,ベロネーズ,ベンティミグリアなどの中からビナデルマールとベンティミグリア、第三世代(今年のブレッターパックの中心)でニムロッド,ダラディエール,ソプラノ,ハートブレイカー,ファロスなどの中から、生き残りそうなものが果たして有るか無いかまったく判断がつきません(色は淡くとも品の良い品種が多いが、花が大き過ぎ。コンカドールやマニサが小さく見える)。第四世代(今年のヴレッターパックの中に少量含まれている)から、今までヴレッター社には無かったタイプの黄色が出てきます。カップ咲きで花の大きさはコンカドールとイエローウィンの中間、草姿もほぼ中間で花色は今までのヴレッター社の品種の中で色の濃かったマニサ,ベンティミグリアの色よりさらに良くなった品種が4品種ほど出てきます(ビアリッツ,ノバトーレ,ベラドンナ,クラトンなど)。ヴレッター社の30数種にも及ぶ黄色系の発表の中で、将来的に生き残る可能性が高い品種がこの第四世代の中から出てくれれば、と考えています(花がイエローウィンよりきれいで草姿の良いものが多いので。しかしそれだけでは定着するかどうかわかりません)。
リリアンデ社
第一世代で生き残る品種は、価格動向は別としてもイエローウィンとマリブくらいではないかと思います(ショッキングはドライセール用なので別)。第二世代では、先に紹介した黄色以外の花色の中から、クリーム色に赤紫色が入り気品の高い印象を受けるニンフという品種が、ショッキングとは別に切花でも良い評価を得そうです。イーズリーという早生系の品種が第一世代にありましたが(花が悪すぎて商品価値なし)、それに近い開花速度で咲く第二世代の黄色系が7〜8品種紹介されています。第一世代からの傾向で「分球しやすい」「低日照花飛び」「花芽分化が早い」などの栽培特性上の問題があるのに加え、イエローウィンを超える「爽やかで鮮やかな黄色を発色する品種」は一つもありませんでした(色がやや淡い印象のあった、ヴレッター社の第一世代のベセノより色合いが良くない)。輪が付き過ぎにならず、花の大きさだけではヴレッター系にも負けないゴーフォーゴールドとレヴォリューションが、かろうじて生き残れる品種ではないかと考えます(早生である点のみを考慮して)。
黄色系の新品種だけでも2.5百万球以上の球根が生産されています。ただでさえコンカドールとイエローウィンが安いのに、一体どういう価格水準で始めるのが妥当なのか難しいところです。
某輸出業者が設定している価格が、黄系新品種を発表してくる価格として適正だとはとても考えられません。情報を小出しにして本来の価値観を狂わせるやり方は、時代遅れも甚だしいと多少憤慨しています。
オリエンタル系
最も判断の難しい系統です。6月発行予定の在庫表価格では、3大品目であるカサブランカ(養成球を除く),ソルボンヌ(標準球18/20サイズ除く),シベリア、すべて価格上昇してしまいます。要するに当社が早期発注確保したもの以外、合わせて確保数が足らなかったものはすべて価格が上昇してしまうということです(それでも昨年のスタート価格以下ではあるのですが…)。カサブランカについては栽培面積減少と品質不安から流通在庫はあるのですが、輸出業者が扱いたがらない傾向になっているようです。ソルボンヌとシベリアについては面積はとても減少しているはずは無いので、上昇する要因は無いように思うのですが、ひたすら中国マーケットの消費を見込んだ動きとなっているようです。
この傾向がシーズン後半まで続くものなのかどうかはわかりませんが、現状は輸出入業者ともども戸惑いながら状況を見つめている情勢です。
価格表発行時(速報版)にも書きましたが、球根は工業品ではない切花農家にとって最も大切な原材料です(相場や需要に合わせて生産速度は変えられません)。
少なくとも上記3品種については、「早めに確保した方がよいですよ」という気持ちに85%くらいなっています。
その他の品種については、ここ4〜5年新品種として発表してきた品種で、導入すべき作型まで検討が済んでいて(使い方がわかっていて)価格が妥当と感じたなら、やはり確保すべきだと考えます(クリスタルブランカ,リアルト,ノバセンブラ,マレロ,ウィレクアルベルティ,シイラ,ジャスティナ,イエローウィンTL球,etc…)。
「球根が安ければ買う」という品種はいつ購入されても構いません。ただし、シンプロン,アカプルコ,ルレーブ,マルコポーロ,メデューサ,ロンバルディアは必要なら買うべきです(面積激減。台湾市場などの動きが早い)。
ヴレッター社を中心とした新品種については交渉に時間が必要です。マニサは16/18以上で1,000,000球以上あります。慌てることはないのでゆっくり構えていてください。
リリアンデ社新オリエンタルについては、良いものをきっちり選びましょう。V.Z.社はここ2年ほどお休みしていましたが、本年からまた魅力的な品種が発表され始めました。
以上、今回は大分営業コメントの入った情勢報告でした。
間違わないように、失敗しないように、良い球根が買えるようにAdjustしながら(ヤンキースの松井選手が去年よく使っていた英語)頑張ります。
参考:山喜農園及び日本の状況(資料2)
(H16年5月1日付発行情勢報告をH16年6月11日に追加・修正)
当社輸入状況(南半球産 + N.L.産)及び98年産〜04年産百合球根弊社出荷状況及び予定
(単位:1,000球)
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12月出庫 (南半球産 +オランダ産) |
1月出庫 |
2月出庫 |
3月出庫 |
4月出庫 |
5月出庫 |
6月出庫 |
98年産 |
( 130+3,270) |
4,000 |
2,700 |
4,300 |
4,300 |
3,400 |
3,800 |
99年産 |
( 1,350+2,750) |
4,900 |
4,600 |
4,600 |
2,900 |
3,600 |
4,400 |
00年産 |
( 2,450+2,750) |
4,400 |
2,700 |
5,000 |
3,300 |
4,000 |
4,100 |
01年産 |
( 3,500+2,100) |
4,300 |
2,900 |
4,500 |
5,200 |
3,100 |
3,800 |
02年産 |
( 5,600+2,100) |
4,300 |
3,200 |
4,400 |
4,600 |
3,200 |
5,600 |
03年産 |
( 5,000+1,950) |
4,700 |
2,900 |
4,650 |
6,000 |
3,600 |
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04年産 |
( 5,900+
) |
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(↑カッコ内左:南半球産)
98年〜03年南半球産球根の出庫数は掘り取り年の9月〜翌年2月10日までの合計出庫数です。04年産の南半球産の出庫数はH16年6月11日までの取扱予定数です。
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当社輸入量 |
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7月出庫 |
8月出庫 |
9月出庫 |
10月出庫 |
11月出庫 |
12月出庫 |
合計1 (当社占有率1) |
合計2 (当社占有率2) |
98年産 |
6,200 |
5,800 |
4,500 |
3,600 |
1,300 |
400 |
47,700(25.6%) |
48,800(26.0%) |
99年産 |
6,600 |
5,800 |
4,500 |
2,300 |
1,050 |
250 |
49,600(26.7%) |
50,800(27.1%) |
00年産 |
7,000 |
6,300 |
3,500 |
1,500 |
800 |
540 |
48,300(27.5%) |
49,200(27.7%) |
01年産 |
6,400 |
6,000 |
3,100 |
1,200 |
700 |
220 |
47,000(28.3%) |
49,050(28.4%) |
02年産 |
5,800 |
5,100 |
3,300 |
1,500 |
860 |
420 |
50,300(28.9%) |
49,400(28.4%) |
03年産 |
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51,000( ? ) |
51,900( ? ) |
04年産 |
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日本の輸入量(推定) |
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参考 |
合計計算式1 (南半球産 + オランダ産) |
合計計算式2 |
98年産 |
150 +186,207 = 186,357 |
187,707 |
99年産 |
1,500 +184,474 = 185,974 |
187,474 |
00年産 |
3,000 +172,709 = 175,709 |
177,709 |
01年産 |
5,000 +161,012 = 166,012 |
172,902 |
02年産 |
11,890〜 +162,022 = 173,912 |
174,022 |
03年産 |
12,000〜 +
? |
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04年産 |
15,300〜 +
? |
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(↑カッコ内左:南半球産の推定球数)
※合計計算式1:同一掘り取り年の南半球産+オランダ産の輸入合計数
※合計計算式2:オランダ産+翌年の南半球産の合計数(03年産南半球産はほぼ確定/04年産南半球産は
8輸出業者の販売見込み:聞き取り調査3月27日現在)
※日本の輸入量はオランダ植物輸出統計及び植物防疫統計より