平成19年7月17日
お客様各位
株 式 会 社 山 喜 農 園
新 潟 県 魚 沼 市 原1280-1
TEL. 025-794-2455
FAX. 794-4168
E-mail:info@yamaki-noen.co.jp
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球根情勢報告
平素よりお引き立ていただき誠にありがとうございます。
早いもので今年も半分を過ぎて、折り返し点を向えました。
当社情勢報告に、お付合い頂いている皆様は、すでにお気付きの事と思いますが、昨年以来「思い悩む日々」が続いており、中々文章が書けません。
実は今回が年を明けてから初めて書く情勢報告となります。
相変わらずの乱文乱筆ですが、お付き合い下さい。
当社Home Pageに新しいリンクが加わりました。
地元「堀之内花卉園芸組合」がほぼ独自で立ち上げたHome Pageです。農協さんや行政、Home Page制作会社を使わないで若い農家が自分達で作っているそうです。(お金の出所は聞いていない。)
時々「山喜農園」の事も書いてあります。(自分がHome Pageの更新をしなくても、情報発信して頂いて大変ありがたいです。)切花産地の状況と生活や心情をお伝えしたいそうです。
頑張って続けて頂きたいものです。(当社も頑張らないといけない、良い刺激になりました。)
1月にニュージーランドへ、5月・6月にオランダ出張をしてきました。
ニュージーランドは埼玉深谷地区の(有)FLC様と。オランダは関東から、FAJ様・大田花卉様、関西から、なにわ花市場様・姫路生花様など、切花農家、農協だけでなく市場関係者からも初めて参加頂く事が出来ました。
新品種の確認だけでなく、百合球根生産の現場を見て頂く事が出来て「よかった」と思っています。
6月のオランダ出張は津南町の切花組合の方々と同行して、今年で4回目になります。3〜4年の時間がかかりましたが、ようやくカサブランカTYS(津南 雪美人 セレクト)という商品の開発完成に近づいてきた様です。
新潟の国産球根から栽培されるカサブランカは「職人技のカサブランカ」で良いと思っています。それこそが「カサブランカという商品」の本来あるべき「すがた」で、この品種に対しての一番の消費ニーズだと思うからです。(安いカサブランカより、まず最高級品質カサブランカ。)
相手(オランダのカサブランカ農家)に理解してもらうのには、1回や2回の話し合いではやっぱりだめだという事、粘り強く時間をかけて信頼関係を作っていくのが、一番良い方法だった様です。
6月上旬には高知の樺村農園様の試験温室見学に行ってきました。(今年3回目)「06年産南半球産百合球根」から始めて、今回の「06年産オランダ産百合球根」からの試験栽培が2回目となるそうです。(新温室での試験栽培)高知と新潟で情報交換が出来て、品種特性の把握も「高知と新潟」でしか適応出来ないデータではなく、全国の切花農家に役立つ情報整理が、出来れば良いと考えています。
6月下旬には渇。浜植木様の展示会に見学に行ってきました。今回が2回目の参加です。全国から数百名の百合切花農家関係者が集まる10年以上続いている業界最古参の百合専門展示会です。今回は特別に、依頼を受けて司会進行という立場を与えられました。下手くそで恥をかいた次第です。植木さんには申し訳なく思っています。
「生き残りをかけた販売戦略」というテーマでしたが、関係無い事を話し過ぎた様です。それでも大勢の方々と「百合」の話が出来た事は、本当に嬉しく思いました。又、来年も誘ってもらえればなぁと思っています。
6月から7月にかけては通常業務をこなしながら、各地への出張及び試作温室のご案内(お越し頂き、本当にありがとうございました。)等、本当に忙しかったです。
今週からようやく落ち着いて仕事が出来る様になりました。
南半球産百合球根・オランダ産チューリップ球根の掘り取りが始まっています。(半ばから後半戦を向えています。)7月末から国産百合の掘り取りも開始されます。
ちょっと休んでから、又頑張って仕事をしていきます。
※原稿を書いたのは7月14日。16日に中越沖地震が起きました。当方、被害は無かったです。
オランダ産チューリップ
掘り取りは70〜80%終了。平年より10日〜2週間早く掘り取りがスタートした。最初は「品質良い」という情報でした。
その後、もの凄く雨が降って掘り取りが出来ず、結局例年と同じ時期に作業完了となる様です。掘り取り遅れの球根は、品質についてちょっと心配です。6月〜7月が涼しかった事は、プラスに働くのではないかと思います。
受注球数は約5,800,000球でほぼ昨年と同じ球数を取り扱う事となりました。
近年のチューリップマーケットは不調を極めています。どうしたら人気回復出来るのか名案は無い様です。「地道に続けていく事。」今やれる事はそれだけです。
球根流通業者も、切花農家も、切花市場もそれぞれの立場の人達が「消費者」を優先して頑張ってきているのは間違いないと思いますが、どこかに自分達の都合を主張した「エゴ」があったのかも知れません。もう一度「商品力」が回復出来る様、頑張っていくしかないと思います。
南半球産百合
7月10日現在、11件の輸出業者からの聞き取り調査によれば、日本市場は約26,581,100球の球根を確保している様です。
発注確保ピーク球数 実輸入数
05年 23,850,000球 20,289,000球
06年 25,804,450球 22,083,000球
が過去2年間の実績です。
26,581,100球の内訳は、下記に示す様なバランスとなっています。
N.Z産 約 17,535,000球 約66%
C.H産 約 9,046,100球 約34%
N.Z産(当社約4,900,000球確保。全体の約73%)
ゴア地区 :作況は良い様子。天候不順でやや掘り取り作業が難航している。
ラカイヤ地区 :作況は品目によりバラツキあり。ルレーブは大きく欠品するとの報告あり。ソルボンヌなどは逆に肥大が良過ぎる様です。
ネイピア地区 :作況は良い。球根が肥大し過ぎるかも知れない。芽がすごく大きくなっている。(暖かい環境で球根を作った時の典型的な症状。)まだ休眠が破れる心配は無い様子。
品種事にバラツキはありますが、大きな欠品は出ない様に思います。
C.H産(当社約1,850,000球確保。全体の約27%)
ロスアンジェルス産:作況は良くない。欠品あり。
バルデェビア産 :不明だがVletter系に付いては、欠品報告が入り始めた。
ネイピア産 :作況は悪い様です。アカプルコ・ルレーブなどで欠品報告が入り始めた。この地区は春から夏が涼しかったので、作況は決して良くならないと思います。球根肥大だけでなく、「球根の力」についても、やや不安に感じています。
C.H産は欠品の可能性が高いが、日本はN.Z産の確保割合が高く、64%となっており、C.H産は34%ぐらいなので、仮に欠品したとしても日本のマーケットに不足感を与える様な状況にはならないと思います。
国産百合球根
06年産
順調。特別な報告事項無し。
07年産
極めて順調。当社生産圃場、及び新潟県内各農協、北海道小清水地区とも、近年では最も生育順調。(種球品質良し。)新潟県については、やや日照不足、低温傾向な所が心配なだけ。夏が暑くならないと、「力のある球根」が出来ない。
オランダ産百合
06年産
確保数:約41,500,000球、昨年比:マイナス4.4%
ほぼ日本全体の動きと一致している様です。(日本全体では6月末までの輸入量はマイナス1.8%だが、最終的には3%〜6%程度減少するといわれている。)
球根品質は不安が一杯です。青カビ・燐片腐敗・冷凍障害の多い年のなると考えています。
特記事項として、約10年振りとなりますが、大きな輸送中事故(海上コンテナ輸送事故)が起きています。相当数の球根が過冷却の為、凍死・腐敗してしまい、それなりに在庫もあったのですが、逆に球根が足りなくなる様な状況となっています。ご迷惑をお掛けしています。申し訳ございません。07年産南半球産在庫等と、組み合わせ代替検討頂いている所です。
07年産
透かし・LA百合:栽培面積増加予定。
ヨーロッパ切花市場は価格低迷。球根価格は下がる様だが、南アメリカ等の需要の伸びが強く、今の所下げる気配は無い。
鉄砲百合:目立った動きは無い。
OT系:目立った動きは無い。
6〜12月切花産地の皆様には、積極的な導入検討をお薦めします(特に露地切花産地)。新しい産地イメージ(計画生産性の向上)形成に必ず役立つはずです。導入検討会・説明会を開催して下さい。お伺いして、説明致します。「3Fクラブ」が、LAでやった事と同じレベルの仕事が、出来るかも知れません。
OH系:やや動きが出てきました。
@ TL・Turbo・TYS・MAK・MAKTL・2Nなど、特殊コンデションの球根は、積極的に導入検討して下さい。
A 流通量の少ない品種も導入検討して下さい。
B 「これは安い。」と思う品種。例えば、リアルト・ロンバルディア・アクティバ・シンプロン・イエローウィン・ウィレクアルベルティなど、使用用途が明確に決まっている品種も、導入検討した方が良いです。
C 流通量の多い標準球・EVR球は慌てなくて良いです。
参考までに:私が地元、堀之内花卉園芸組合様を始め、「球根導入説明会」を行わせて頂いた中で、本年お繋ぎしたかったのは、「慌てて球根を買わないで下さい。」という事でした。慎重に時間をかけて、導入検討する事が、出来る年となっているはずです。
80年代の半ばから00年代にかけて、オリエンタルは細かく分けると「5つの時期」に分類出来る様です。
@「スターG・ルレーブ・カサブランカ…3種類集中期」
A「ルレーブ・カサブランカ・アカプルコ・マルコポーロ・コンアモーレ・ベルカントなど…品種多様化期」
B「ルレーブ・カサブランカ・ロンバルディア・メデューサ・ティアラ・ティバー・ソルボンヌ・シベリア…品種移行期」
C「ソルボンヌ・シベリア・カサブランカなど…品種集中期」
D「ソルボンヌ・シベリア・カサブランカ・イエローウィン・シーラ・クリスタルブランカ…品種移行期」」
A、Bの品種移行期では、各々の品種が5,000,000〜10,000,000球ぐらいの流通数となり、上位品種のシェア率が、さほど高くありませんでした。
@、Cの集中期は、上位品種のシェア率は60〜70%近くにまで高まっています。(ソルボンヌ・シベリア・カサブランカは20,000,000球以上の流通を経験している。)
今はDの「品種移行期」に入っているはずです。この時期を5〜10年経過しないと、「再び集中期」は来ないはずです。今、求められている「新しい品種」は「ソルボンヌ・シベリア」の替わりでは無く、(欲しくても、そんな物はまだ準備されている様にみえない。)5,000,000球〜10,000,000球、もしくはそれ以下の流通数しか無くても、切花産地が「計画生産」・「計画販売」の実行が行える品種、先行している産地が、「独自プロモーション」出来る品種が生き残っていく様に思います。
この時期でも「すき間」はあると思いますが、それだけでは「食っていけない」と思います。(その手の多様化が一番危ない。切花供給の安定が、計られなければオリエンタルという品目がだめになる。)球根供給が伴っていない中で、関わる人達が「新しい品種」を育てて行かなければいけない時期だと思います。
よくよく相談して、導入品種の決定を願います。
以上、情勢報告でした。
且R喜農園
森山 隆