平成13年11月22日

お客様各位

株 式 会 社    山 喜 農 園

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球根情勢報告

 

オランダ産アイリス

2000年産

 

 概ね順調。600球入10/UPで一部不発芽があるが、採花できるものはボリュームがあり優秀。800入採花率よく順調。抑制作型はブルーマジックのみ。試験導入したイエスタディはオランダ冷蔵および作型の不適正から花色確認に止まる。

 

2001年産

 

 良質ロットのブルーマジックは栽培減少。従って球根価格上昇。11月現地温蔵庫内検品では例年並の品質に見えました。

 

 

オランダ産チューリップ

2001年産

 

 無冷蔵船便輸入球については惨憺たる結果となった。大幅に入荷が遅れていた5℃船便処理済球は、当初発根が良さそうとの報告を挙げているが発芽のバラツキが多く均一でない。6月までの低温の影響がやはり出ている。11月14日現在約61%の球根を出庫しており、着荷状態でのクレーム報告はまだ数えるほどしかないがトラブルが予想される。

 

 切花作況については今月末より確認に入る。11月中旬以降納品分についてもまだ欠品が起きる情勢が続いている。

 

 オランダ産チューリップ球根生産流通量約35億球に対して、3億球を超える球根が栽培農家/輸出業者レベルで処分されている。大変な年になりそうです。

 

2002年産

 

 オランダにおける定植作業は11月10日でほぼ90%終了している。近年に無く土壌コンディションの良い状態で作業が進んだ。9月の平均気温よりも10月の平均気温が高かった年で(平年よりも4〜5℃高い。観測史上最も高い気温。超異常気象。)土壌コンディションは良いが、定植温度が高すぎる懸念がある。

 

 Plastic,Turbo,Early球の見積りは12月以降出る予定。

 

 

オランダ産百合

2001年産

 

透かし百合.L.A.ハイブリッド

 

 9月の長雨と低温の為ボトリチスの発生、肥大も大幅に抑制された。球根栽培中後期の低温で肥大抑制というのはちょっと理解しにくいが、それほどボトリチス発生が大きかったのだと思う。面積あたりの植え付け数を増やしてかなり密植で栽培していたのが大球出荷率が悪い最大の原因だと思う(10〜25%多い)。種球品質の問題と、初夏急速な温度上昇があった為なのか、分球率が極めて高い。

 

 透かし百合球根の球根栽培原価を大幅に下回る価格情勢が続いている為、掘り取り放棄、仮に掘り取っても分球率が高かったりすると、選別コストが出ないという理由で選別作業停止、発注していた球根が業者に入荷しないというケースが大変多いそうです。例えば、グランドパラダイスなどは30%くらいの納品率になりそうだということです。10月の高温(地温13℃以下がほとんど無い)の為だと思いますが、11月1日〜7日の出張期間中に確認した球根は、通常12月下旬くらいに確認できる芽の大きさになっていました(通常12〜17℃くらいが一番球根内部の芽の従伸長と葉分化を進める。気象条件的に予冷期間が長く本冷期間が短いコンディションになっている)。

 

 12月中旬以降の着荷後の検品をしないとなんともいえませんが、休眠打破期はそれほど遅れないと思いますし、促成作型には良い球根になるはずです。抑制作型についてはまだコメントできません。

 

 上記のような状況なので、農家と輸出業者間の取り引きは今月中に終了するマーケット情勢です(輸出業者の持つ在庫範囲内での取り引きとなる)。

 

鉄砲百合

 

 サマースプラウト球が多い。00年産の経験を生かして掘り取り、からパッキングまでの期間を長く設定しているようです(球根の呼吸活動が低下してからパッキングをする)。

 

オリエンタル系

 

 チューリップ/透かし百合のところで若干触れておりますが、10月の平均気温の高さの影響を一番受けそうなのがオリエンタル系です。

 

 本来一番肥大する時期の9月に長雨低温による生産抑制が掛かり、9月の平均気温を上回る10月の平均気温という条件は過去に経験が無い為、今現在の球根コンディションがどうなっているのかよくわかりません。芽の大きさと葉枚分化数は明らかに例年より進んでいるようですが、球根の充実と休眠打破の為の低温積算は遅れていてまだ充分とはいえません。透かし百合よりオリエンタルの方が休眠が開けるのには時間が掛かりますので、球根栽培期間中の低温が全く足りていないということです。 作況は並とのことなので球数不足等は心配していませんが、充実を待った掘り取り期設定と低温充足の期間をおかなければいけませんので、促成球の納品は若干遅れると考えています。N.Z.産または国産球(促成用)等での対応も想定いただきたいところです。

 

 輸出業者と球根栽培農家との契約は10月末現在約70%(百合全品目)。推定1,300ha分の球根の納品先が決まっていません。オランダの球根栽培農家にとっては本当に大変な年となるようです。

 

 球根市況については全般的に下降していて、どこが「底」なのかよくわかりませんが、品質等を考えればそろそろ仕入れ決定する時期を迎えています。

 

 

 

 今回唯一良い話として聞けたのは、新潟県産球とオランダ産球の違いを科学的に数字で示すデータが出てきたことです。最近オランダでは、球根の充実や休眠打破・対凍性を球根の糖分量で調べるという方法を研究しています。まだ実用化されていませんが面白い結果が出てきました。

 

 まずオランダ産は球根の澱粉・炭水化物・ショ糖化と変化していくスピードが非常に早く、一定の時期が来ると急速なカーブを描いて最大値に到達するそうです。対して新潟県産球のような暖かい気象条件で生産された球根は、最大値に到達するまでの期間がずっとゆっくりで3〜4週間遅れるそうです。またその糖分最大値は、通常のオランダ産よりも35〜50%も多いそうです。早く最大値に到達したものは早く下降し、ゆっくりと到達したものはゆっくり下降するそうです。

 

2000年産のオランダ産の例からもわかるように、秋の気温が下がり切らない若干若掘り気味だった球根の糖化量は遅掘り球とさほど変わらないくらいの量になるのだそうですが、切花重量はずっと軽くなりますし早く球根劣化が進むそうで、オランダでも有名な切花農家のダアウン氏・パンクフォン・レーオン氏の「2000年産のオランダ産球根は7月中旬くらいで燃料切れを起こしたから抑制の品質が良くない」、いわゆる充分な力を長期にわたって維持できなかったというコメントに繋がってくるようです。対して、遅掘り暖地産はまあまあの出来となっているとのことでした。新潟県内でも「中越型」といわれる栽培方法・冷蔵方法に数字の裏付けが加えられたような気分で、この研究がさらに進んでくれればと思いました。

 

国産百合

2001年産

 

早掘り

早掘り促成季咲きドライセール用および北海道小清水産

 

 県産早掘り球については、販売はほぼ終了。促成向けの冷蔵処理を行なっている。休眠打破はほぼ例年通り。

 

 小清水産については、導入初年度の気象条件に近い天候で仕上がった。休眠明けも早くなるはずで、オランダ産Turbo球の休眠打破はかなり遅れると思うので期待できる。

 

遅掘り

抑制切花向け新潟県産

 

 現在入荷選別作業中。球根の肥大はほぼ昨年並み(例年より大きい)。産地にもよるが、葉元基を残したまま既にかなりの葉枚分化数となっている。現在、常温ないしやや高めの12℃で管理中。

 

 

N.Z.産百合

2001年産

 

 11月16日現在2,900,000球(全体3,500,000球)出荷しているが、あまり植え付けは進んでいない。推定35%前後。ルレーブ16/18・カサブランカ18/20・エジプト14/16など素晴らしいスタートを切った。昨年よりも順調。球根保管状況と9月・10月定植分の結果は、前年より数段良いと思います。ただし、N.Z.産(というよりも南半球産)の場合、国産は言うに及ばず、オランダ産よりも冷蔵期間中の球根が「痩せる」スピードが早いので、12月・1月以降定植作型がどうなるかはまだわからない。経過は次回の情勢報告で。

 

2002年産

 

 球根定植作業はほぼ終了している。日本向け輸出可能な球根生産者は3件から5件へ増加予定。

 

 ワイウク地区については11月10日頃定植終了しています。作業環境は良好、現在15〜25cm位になっている。対日向け約1,250,000球と見込んでいます。

 

 ラカイヤ地区については、定植時環境は極めて良好。2001年産の切花作況からも伺えるが、非常に健全な力強い芽が出ている。現在までのところ、気温は平年より高く日照量も非常に多い。品種によっては既に30cmを超えるものもあり、成長が少々早すぎるくらい。若干乾燥気味で、今週から圃場灌水を始めている。対日向け約4〜4,500,000球と見込んでいます。

 

 ゴア・タパヌイ地区については、10月上旬からの定植環境は良かったが、後半雨気味となり作業は11月までずれ込んだ。ラカイヤ/ワイウクよりは気温も低く当然遅れている。圃場は昨年より北上させている(暖かい方へ移動している)。対日向け約1,8〜2,500,000球と見込んでいます。

 

 合計約8,250,000球と見込んでいますが、これは過去3年間(99〜01年)のような品種指定サイズ指定のできないコンディションではなくて、品種については制限がありますが(生産品種がオランダより少ないため)、ほぼ希望サイズで納品できる球数としての数量です(前年より約3,000,000球の流通量増加)。日本向けでない品種サイズを含めると生産量は約13〜15,000,000球となる予定です。暖地の生産者だけでなく、北日本の生産者の方も切花作型の大きな変革が予測されておりますので、くれぐれもご注意ください。

 

 

Chile産百合

2002年産

 

 生産地は大きく分けて4ヶ所。

 

1)一番暖かく年間の気温が安定しているのがカイエテ地区。生産農家は1件あるが日本向け球根の品質からは程遠く、生産が継続されるかさえもわからない。

 

2)チリ最大にして最も優秀な生産会社であるソネ社があるのがバルデビア地区です。土壌条件・圃場環境は優れています(若干加里の投入量を多くしなくてはいけないのがやや不安)。年間降雨量はほぼ新潟と同じですが、異なるのは掘り取り期と雨期が重なっていること。雨期に入ると晩秋よりも地温が上昇してしまうのが掘り取り後の管理を難しくしていますが、10,000uを超える施設を有し体制整備を行なっています。生産農家は1件です。ヴレッター社/パウ社(育種会社/切花会社)の委託栽培も行なっています。

 

3)バンザンテン社が取り扱うことになる球数はオソルノ地区で生産されます。栽培期間中の温度の振れ幅が大きく、既に3回チリ視察を行なっていますがなかなか傾向が掴めません。他にもう1件オーニングス社の扱う農家がいます。

 

4)最も南(1番涼しい)の生産地がピュエウエ地区です。オランダのバンデンボス社の子会社で、アンデスバルブ社が生産しています。土壌条件と気温はこの地区がチリでは一番優れているように思いますが、バルデビアと違い雨期はありませんが年間降雨量の一番多いのがこの地区で、まだ栽培の経験が浅かった頃は(今でもそうですが)ボトリチスによる早枯れをさせていました。非常に排水性の良い土地なので、圃場冠水によるウォーターダメージといった問題は今までのところ無いようです。VDB社とST社が扱うこととなるようです。

 

 

 本年9月中旬から国の隔離栽培圃場での品質調査が行なわれています。順調に検査が進み、両国の合意が見られれば2002年産より免除となりますが、正式な決定は来春以降になるはずで現段階ではまだわかりません。

 

 仮に免除になったとしたとき、

 

1)カイエテ地区

@まず日本向け輸出は無いと思います。

 

2)バルデビア地区

@現在までのところP.F.Onings社・Verdegaal社が扱うことになるようです。その他日本の輸入会社3件が直接取引きを行なう予定となっていますが、現在協議中です。ヴレッター社・パウ社の委託生産を含めて約70haの生産面積となっています。約20,000,000球。対日向けは不明です。自社生産品種数25〜35品種となります。

 

3)オソルノ地区

@バンザンテン社(ニコ・バイセ氏) 約4,200,000球の生産量。対日向けの球数は不明です。

Aオーニングス社(ファンレモン氏生産分) 約1,500,000球。対日向けの球数は不明です。

 

4)ピュエウエ地区

@バンデンボス社 約10,500,000球。うち日本向けと思われる品種の生産面積は7ha 約2,100,000球、日本向けサイズとなると約1,000,000球となります。スティーンボーデン社の委託栽培も行なっていますが詳細は不明です。間替りの状態なのでそれほど多くないと思われます。

 

 隔離免除になったときの供給能力は既にN.Z.産を超えており、世界各国の百合球根消費力から行くと(世界的にダブつき気味)かなりの量が日本に入ってくると予想されています。2002年の段階で既に南半球産もオランダ産同様、過剰気味になってくるようです。

 

 以上、情勢報告でした。